リアス海岸、三陸沖の潮境、山と川
豊かさをひとりじめする山田湾。
3つの海流が混じり合う三陸の海と、
静かに揺蕩う山田湾
北の重茂半島と南の船越半島に囲まれ、丸いきんちゃく袋のような形をした山田湾。外洋と接する部分が狭いため、のどかに凪ぐことが多く、「海の十和田湖」とも呼ばれています。町の大半を占める森林からは3つの川が流れ込み、山の養分もたっぷりと湛えられている山田湾。カキやホタテの養殖業にとって、これ以上ない恵まれた環境が、ここには贅沢にそろっているのです。
三陸沖は、親潮と黒潮、津軽暖流の3つの海流がぶつかる潮境で、古くから好漁場として知られています。当漁協が漁業権を行使する漁場は、トドヶ崎から船越湾の中ほどまでに点在。採介藻漁業の第一種共同漁業権漁場、刺網などの第二種共同漁業権漁場、カキ・ホタテ・ワカメ・コンブを養殖する区画漁業権漁場に加え、定置漁業権漁場では、組合自営や生産組合の定置網が設置されています。
定置網
Fixed Net Fishing
春夏秋冬、一年を通じて
バラエティに富んだ魚が獲れます。
三陸やまだ漁協の自営定置網は、3カ統(うち1カ統は重茂漁協と共同)あり、このほか、組合員である生産組合の定置網が6カ統操業しています。春のママス(サクラマス)に始まり、夏にはサバ、イワシ、汐子(ブリの幼魚)、スルメイカ、 秋にはシロザケ(秋鮭)など、一年を通じて三陸沖に集まる旬の魚を水揚げしています。 また、カレイやソイ、アイナメ、マンボウなど、4月から翌1月まで、魚市場はバラエティに富んだ魚種でにぎわいます。
マガキ
Pacific Oysterer
ていねいに大切に育てられた
濃厚な海のミルク
ホタテの貝殻に付着したマガキの稚貝を宮城県から購入し、山田湾内のいかだと延縄施設で、約3年間垂下養殖します。大きな株となったマガキは、水揚げすると2つのパターンで出荷します。ひとつめは、殻を剥いて加熱用とするもの。もうひとつは、株を分けて1粒ずつにし、殻頂部に穴を開け、ロープに吊るして海に戻します。こちらはさらに半年から1年養殖し、水揚げ後、2昼夜殺菌海水で飼育して浄化。生食用殻付きカキとして出荷します。 山田湾では、マガキが大量に死ぬことは無く、確実な養殖対象種となっています。
ホタテガイ
Japanese Scallop
ひとつひとつ、のびのびと
山田湾の栄養を取り込みました
三陸やまだ漁協では、ホタテの稚貝を北海道や岩手県北から購入しています。山田湾で7cm前後の大きさになるまで育てると、一度陸に上げて「耳吊り」の作業をします。ホタテの殻の突き出た部分に穴を開け、テグスなどでロープに吊るし、その日のうちに海に戻すのです。そこからさらに約2年、山田湾で垂下養殖します。ホタテガイは夏の高温水に弱く、1986年(昭和61年)の17億円をピークに、近年は2億円前後になっています。
ウニ
Sea Urchin
三陸を代表する夏の味覚
口開け日には町が活気づきます
岩手県で漁獲されるウニは、キタムラサキウニが8~9割、エゾバフンウニが1~2割です。 キタムラサキウニの資源は近年、安定していますが、エゾバフンウニは夏の水温に左右されやすいのが特徴(高水温の翌年は不漁、低水温の翌年は豊漁)です。山田地域では、船上から箱眼鏡で海底をのぞき、タモ網か2本鈎を使い漁獲する方法が一般的です。春から夏は海水の透明度が低いことが多く、また海藻が繁茂しすぎると海底が見えないため、ウニ漁には高い技術と経験が求められます。
エゾアワビ
Ezo Abalone
身の締まった山田のアワビ
調理法で七変化する食感が魅力
岩手県は日本で一番のアワビ生産県です。かつては、エゾアワビのみを1,000トン以上生産していましたが、現在は400~500トンに低迷しています。山田地域では、船上から箱眼鏡で海底をのぞき、鋭い鈎に引っ掛けて獲る漁獲方法が一般的。漁期は11月から2月までですが、資源保護のため12月で終了します。重茂漁協との入会漁場がトドヶ崎にありますが、本州最東端のトドケ崎は親潮が最も接近する場所ですので、親潮の低水温の影響を受けると、あわび資源も変動します。
ワカメ
Sea Mustard
山田生まれの山田育ち
身が厚く柔らかいワカメです
ワカメの種苗は地種を使った自家採苗でまかなっているため、山田のワカメは、山田生まれの山田育ち。初夏にメカブから採苗し11月頃に沖出ししてロープに巻き込みます。1月には間引きをして良い物を残し、 3月初旬から4月初旬にかけて出荷します。 刈り取ってメカブや葉先を取って出荷する生出荷と、 湯通し塩蔵して出荷する方法があります。三陸やまだ漁協では、主に塩蔵し、茎を除いて出荷しています。